雨がやんだ校庭には、
いくつもの水たまりができていて、
廊下は足跡でしっとりと濡れている。

体育館の裏、
友だちと作ったひみつの花壇。
「誰にも内緒だよ、絶対だよ」
そう約束して大切に育てた芽は、
たくさんの葉っぱを広げ、
ぷっくりしたつぼみが風に揺れている。
「明日には咲いてるかな?」
「楽しみだね。」
息を弾ませながら、友だちとにっこり笑う。

ふと、空を見上げると、
大きな虹がかかっていた。
「うわぁ、きれい!大きいね。」
「二重になってる!すごいね。」
その輝きに、心がふっと軽くなる。

体育館の脇に咲き誇る紫陽花たち。
その表面には水滴が太陽の光を反射して、
キラキラと輝いている。
まるで小さなダイヤモンドみたいだ。

その葉っぱの上には、一匹の小さなかたつむり。
のんびりと日向ぼっこをしている。
「かたつむりさん、ご機嫌いかが?」
もちろん、答えは返ってこないけど、
触覚を出したり引っ込めたりする姿が、
「こんにちは」って挨拶しているみたいで、
なんだかほっとする。

幼稚園のころ、本で読んだお話を思い出す。
虹の向こうには、おとぎの国があるって。
もし、虹のトンネルをくぐれるなら、
どんな世界が広がっているんだろう?

ピエロがサーカスをしている?
亡くなったおばあちゃんが
優しい笑顔で迎えてくれる?
それとも、笛を吹くおじさんが
どこか遠くへ連れて行ってしまうのかな?

飛行機に乗れば、虹をくぐれるのかな?
そんなことを考えていると、
「休み時間、終わっちゃうよ!」
校舎の窓から友だちの声が響いた。
「あっ、やばっ!ごめん、すぐ行く!」
慌てて走り出し、下駄箱へ向かう。

次は理科の授業。
だけど、心の中ではまだ、虹の向こうを見ている。

教室に戻る前、もう一度だけ振り返った。
虹は、さっきよりも大きく鮮やかに見えた。
まるで、「また、ここにおいで」って
優しく語りかけているようだった。

虹のむこうには、どんな世界が広がっているんだろう。
行ってみたいな。
行けたらいいな、あちらの世界に。